『鍼灸の鍼は痛い? 鍼の太さと痛みの関係について①』
当院には、鍼灸施術を受けるのが初めて、という方が大変多くいらっしゃいます。
ご新規でお越しの患者さんのうち、おおよそ半分ぐらいは、鍼が初めて、という方々です。
そして、皆様に聞かれるのは、「痛いですか?」という質問。
これは実は解答が難しい質問です。
痛いか?と言われると、鍼を刺した瞬間に痛いということはほとんどありません。
というか、皆さんが考えておられるような、縫い針や注射針が刺さった時のような痛みはほぼありません。
その理由の一つは、鍼の形状の違いです。
縫い針、注射針などは、「刺す」ものなので、できるだけ抵抗なく皮膚に刺入できるよう鋭く尖らせて「切って」皮膚に入れています。
これは刃物なんかも同じですね。
ところが鍼灸の鍼は実は先端が顕微レベルで見ると少し丸くなっています。
つまり、皮膚が切れにくい形状になっていて、皮膚組織の隙間に滑り込ませるように「押し込んでいる」感じというとわかりやすいと思います。
そのため、鍼を刺した後にも傷ができにくく、出血も最低限に抑えられるのです。
とはいえ、鍼灸の鍼も間違って指先に刺したりすると飛び上がるほど痛いので、あとは鍼灸師の技術なのだろうと思いますが、実は私もこの辺はよくわかりません。
ただ、間違って刺した時と、鍼灸師がきちんと施術するときでは、全く痛みが違うのはちょっと不思議ではあります。
ちょっと脱線しましたが、表題の「太さと痛みの関係」についてご紹介します。
鍼灸では写真で示したように、いろいろな太さの鍼を使用します。
この例では、左から右に向かって太くなっています。
一番左の濃い青は、直径0.1mm
一番右のセピア色は、直径0.3mm
実に3倍も違います。
直径が3倍ということは、面積では9倍になります。
では、さぞかし太い針は痛いのだろうと考えがちですが、実はほとんど変わりません。
当院で通常使う一番細いのは、0.16mm径なので、0.16mm径と同じ長さがある0.25mm径の鍼を使って比較してみました。
患者さんに予めお断りした上で、どちらが刺入した時に痛いか聞いてみたんですが、答えは「全くわからない」でした。
3人に確認しましたが、感覚的には差はないようで、鍼の太さが痛みに関わっているわけではなさそう、ということがわかりました。
では、細い鍼と太い鍼。どちらが安全かという話になると、基本的に当院で使っっている国産のセイリン株式会社製の鍼は、通常の使い方で折れることは無く、細い鍼に強い通電をしたり、無理やりこねくり回すようなことをすれば折れる可能性もありますが、常識的な使い方をすれば、折れることはないです。
とはいえ、
「当院では通電をすることが多いので、できれば太めの鍼を使いたい」
「鍼が細くて柔らかいと、コントロールが難しく、目的の場所に正確に当てられない」
という事情があるので、安全性と、鍼のコントロールの問題で太めの鍼を使わせていただいています。
もちろん、通電する必要がない場所、極細い鍼が適すると思われる場合には、適切に鍼を選んで使い分けています。
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以下、②に続きます。