「頸椎症性神経根症かと思ったら・・・」
珍しい症例を経験したので、共有したいと思います。
今回の患者さんは、肩から親指、人差指、中指までの痺れがあり、MRIでC6の狭窄が見られるという50代の男性。
症状から考えれば、当然「頸椎症性神経根症」を疑うべきで、図に示す通り、C5、6、7の問題があれば、この患者さんの症状と一致するので、明らかに頸椎症であろうということで施術を行いました。(実は、この時点で、一応、「胸郭出口症候群」も疑いましたが、中指、小指に症状がないことから除外しました。)
5日ほど前に初回の施術を頸椎メインで行い、本日二回目でしたが、初回の施術では全く効果がなかったとの事。
そんなはずはないがなぁ、と思いながら、今回は頸椎だけではなく、肩甲背神経、僧帽筋、棘下筋などにも施術を行いましたが、やはり変化がないとのこと。
論理的に考えれば、頸椎症以外には考えられないし、前回は肩甲骨の内側に痛みがあり、これはC5、6の関連痛で間違いないので、やはり頸椎を痛めているはず。
しかし、改めて患者さんに首の稼働範囲を確認すると、真上は向けるし、首を動かして痺れが増すことはない、との事。(頸椎症であれば、真上を向くのが難しいです)
さあ、こうなると何が何だか分かりません。
症状は明らかにC5,6,7の障害で、C6の狭窄があり、C5、6辺りの関連痛もあるのでほぼ間違いないのに、首は痛くない。
再度、詳細を知るために、患者さんにいろいろ日常生活での悪化要因を伺うと、決まった動作で痛くなることは無いけど、犬に指先をつつかれただけで悪化することもある、というのです。
ここで私は気がつきました。
これは、首では無く、腕の問題では無いだろうか?
C5,6,7の症状が出ているのは、ただの偶然では?
念の為、右肩周りの筋肉を触ると、ものすごく痛がる。
左右差は歴然で、大胸筋、小胸筋、広背筋、棘下筋などが明らかに硬いので、この辺りの施術を追加。
すると、なんということでしょう!
患者さんが、「明らかに楽になった」と仰るではありませんか!
つまり、今回の患者さんは、頸椎症性神経根症に見えるけど、肩周りの筋肉の硬さが原因で腕神経の一部が圧迫されて起こっていた症状で、大枠で言うと、最初に除外した「胸郭出口症候群」であったわけです。
こんなこともあるんだなぁ、と勉強になりましたが、初回で見極められなかったのは、患者さんに申し訳無い事をしたと反省しております。
私は、基本的には医師の判断はあまり参考にしないんですが、今回は症状が明確すぎて、医師の診断に引っ張られた結果、見極めに失敗した例でした。
今回の反省を糧に、今後は医師の診断を鵜呑みにする事なく、あらゆる角度から原因を特定した上で方針を立てるよう心がけたいと思います。
何ヶ月も通院しているが、症状に変化がない、と言う方は多いと思います。
3ヶ月以上通院して改善が見られないと言う方は、鍼灸を試してみるのも良いかもしれません。
いぶき館は、あなたの笑顔のために、全力を尽くします。